怖い材料
テストピース製作のご依頼をお引受けする時に、材料の素性や情報が明かされないことがほとんど。
試作段階の材料のため、ほとんどの材料がお客様から支給され
一般的に購入できる材料はほとんどない。
材料に添加されている元素と配合、鉄系の「○○材」に近い特性、硬さは「○○」といった
限られた情報から、加工性の予測を立てて製作を進めさせていただきます。
ほとんど毎回お客様からお預かりする貴重かつ大切な材料なので
失敗すると取り返しがつかず、細心の注意で取扱います。
そんな中でも、相談内容を拝見した時に、一瞬で気持ちの中に緊張感が高まる材料があります。
それは、特殊な継手材。2つの材料を溶接でくっつけている材料。
何が怖いって、手間が掛かって作られ、一般的には絶対に買えない材料なので
万が一が起こってもやり直しがきかない。
すべての作業工程で失敗が許されず、一歩間違えると取り返しがつかない。
そこに加えて、採取位置を切り出し前の材料状態時から、加工完了後に製品となるまで
採取位置の管理が必要となると緊張感は右肩上がり。
しかし、加工品には失敗がつきものため、万が一、想定外の何かが起こっても
正しい手順で取り扱っていることを説明ができるよう手を施す。
材料をお預かりした段階で、写真を撮り、各加工品の加工位置(切断位置)を材料上にマジックで記す。
黒のマジックも使うが、派手な色で加工が終わっても消えない種類のマーカーで記す。
マジックでの記しが終わると再び撮影タイム、図面の内容と相違がないか、加工後からでも
見返せるように記録を残す。
そんなことを、ひたすら作業工程の途中にも繰り返しながら進めます。
手間は掛かるが、アナログに進めるしかない。
この作業を怠ると、失敗した時に証拠がないまま失敗の理由を説明することになり
失敗の報告資料に説得力が不足し過ぎる。
「ちゃんとやってました。」は通じず、説得力が足りない説明になると全ての作業までもが
要求内容に正しく行っていたかどうか不信感の対象に。
最悪の状況を避けるために手を尽くす。
これでもかと、手を尽くしても不安はつきまとい、納品後経っても
しばらく心の中がザワついたままなことも。
何度ご依頼を受けても、継手材だけはやっぱり怖い。
しかし、取り扱いが難しい材料と向き合う時はなぜか楽しく
今の仕事をしていて良かったと思え、なぜ起業したのかあらためて思い出す。
弊社の使命は、明るい未来を創るのに不可欠な金属の可能性を少しでも広げるお手伝いをすること。
そのために新しい材料の研究開発を支援していくこと。
難しい案件でも、常に前のめりにやらせていただきます。